汽力発電の仕組みは、過去10年間で 4回出題されている重要問題。
過去10年間で出題された汽力発電問題:
・H30年問17(再熱サイクル)
・H27年問18(ボイラー)
・H25年問17(再熱サイクル)
・H22年問16(再熱サイクル)
で、あなたに必ず押さえてもらいたい最重要ポイントは、
給水ポンプ、過熱器と復水器の位置。
これを押さえておけば、電工1の汽力発電の問題はほぼ解ける。
汽力発電システム
最重要ポイント
この記事を読んでくれているあなたには、汽力発電システムの基本よりも先に、問題を解くための最重要ポイントをお伝えしようと思う。
それは、給水ポンプ、過熱器と復水器の位置。
補足すると、
1.給水ポンプでボイラに水を送る
2.過熱器で過熱された蒸気がタービンに送られる
3.タービンを回した蒸気は復水器で水に戻る
これを押さえておけば、電工1の汽力発電の問題はほぼ解ける。
それを実際の問題で、あなたに体感してもらおう。
体感その1 H30年問17
図は汽力発電所の再熱サイクルを表したものである。図中のA,B,C,Dに当てはまる装置の名称は。
<解答の選択肢>
<ふくラボ式解答方法>
最重要ポイントである給水ポンプ、過熱器と復水器の位置と問題図とを見比べて欲しい。
(問題図)
すると、B:過熱器、D:復水器とすぐ推定できるだろう。
これだけで、選択肢ハが正しいと判断可能。
体感その2 H27年問18
図は、ボイラの水の循環方式のうち、自然循環ボイラの構成図である。図中の①、②及び③の組合せとして、正しいものは。
<解答の選択肢>
- ①蒸発管 ②節炭器 ③過熱器
- ①過熱器 ②蒸発管 ③節炭器
- ①過熱器 ②節炭器 ③蒸発管
- ①蒸発管 ②過熱器 ③節炭器
<ふくラボ式解答方法>
この問題はボイラー部分に特化しているが、これも最重要ポイントで解ける。
(問題図)
ここで注目してもらいたいのは、過熱器で過熱された蒸気がタービンに送られること。
これだけで、タービンへ送られる直前にある②が過熱器だと見極めれて、選択肢4が正しいと判断できるだろう。
ポイントを押さえた上で
最重要ポイントが最重要なのは分かっていただけたと思う。
しかし、これまでと違うパターンで出題されたときに、あなたが慌てることがないように、以下の汽力発電の基本についても目を通していただきたい。
汽力発電とは
汽力発電とは、高圧の蒸気でタービンを回し、タービンに接続した発電機で発電するシステム。
高圧の蒸気を作るのに、石油や天然ガス、石炭を燃やすのが火力発電所、核分裂を利用するのが原子力発電所、なのは、あなたもご存じの通り。
汽力発電の基本サイクル
高圧の蒸気を作ってタービンを回す基本サイクルが次の通り。
- 給水ポンプでボイラに水を送る
- ボイラで水を加熱&過熱し、蒸気を作る
- 蒸気をタービンに送り、タービンにつないだ発電機を回して、発電する
- タービンを回した蒸気を復水器で水に戻す
基本はこれ。
そして、熱エネルギーを有効に使って発電効率を高めるために、過熱器、節炭器といった装置の活用や、再生サイクル、再熱サイクルといった改善されたサイクルシステムが利用されている。
ボイラの中の装置
ボイラの中に節炭器、蒸発管と過熱器がある。
蒸発管はその名の通り、水を蒸発させ蒸気を作る装置。
過熱器は、蒸発管で蒸発させた蒸気をさらに加熱して、高温度で高圧力の蒸気(過熱蒸気)をつくる。
節炭器は、蒸発管・過熱器を通過してきた上記の排熱を利用して、水を予め加熱する装置。
ボイラの中で石油等が燃やされてできた高温ガスは蒸発管→過熱器→節炭器を通過しながら水・蒸気に熱を与え徐々に温度が低くなり、最後は煙突から排出される。
出題:H27年問18
注意
過熱器については、ボイラの外に過熱器を配置しているテキストも多い。
しかし、電工1の筆記試験ではボイラの中に過熱器が描かれているので、このブログではボイラの中に過熱器を配置している(図はH30年問17の問題文で、Bが過熱器)。
再生サイクル
タービンに送りこまれた蒸気の一部を給水加熱器に送って、ボイラに入る前の水を加熱するシステム。
再熱サイクル
高圧タービンを回した後の蒸気を再熱器に送り、再加熱して低圧タービンを回すことでエネルギーを上げる仕組みの熱サイクル。
筆記試験では、この再熱サイクルのシステムが3回出題されている。
実践問題
汽力発電の問題は、最重要ポイントでほぼ解くことができるのはお伝えしたとおり。
だけど、ここでは、他の基本事項を押さえた正攻法の解答方法をご紹介する。
再熱サイクル H30年問17
図は汽力発電所の再熱サイクルを表したものである。図中のA,B,C,Dに当てはまる装置の名称は。
<解答の選択肢>
<正攻法の解答方法>
問題文で「再熱サイクル」とある。したがって、すぐにCを再熱器を判断する。
次に、汽力発電システムで、基本、再生、再熱のシステムを問わず必ず含まれているのが、給水ポンプと復水器。速攻でDを復水器と見極める。
ここまでで、正しいものはハが分かる。
本番はここでマークすれば良いが、この記事は解説記事なので、AとBについても説明を。
上の注意欄でも指摘したが、ボイラの中には水・蒸気を加熱&過熱する蒸発管、過熱器、節炭器が配置されている。
したがって、Aがボイラで、Bが過熱器。
ボイラの構成 H27年問18
図は、ボイラの水の循環方式のうち、自然循環ボイラの構成図である。図中の①、②及び③の組合せとして、正しいものは。
<解答の選択肢>
- ①蒸発管 ②節炭器 ③過熱器
- ①過熱器 ②蒸発管 ③節炭器
- ①過熱器 ②節炭器 ③蒸発管
- ①蒸発管 ②過熱器 ③節炭器
<正攻法の解答方法>
ボイラの中身を問う珍しいタイプだが、水と蒸気の流れを押さえていけば大丈夫。
基本システム:
1.給水ポンプからボイラに送られた水は、まず節炭器で加熱
2.それから蒸発管で蒸発
3.蒸気は過熱器で過熱蒸気となってタービンへ
問題文の図をみると、給水ポンプで送られた水は、まず③を通るので、③は節炭器の可能性大。
タービンへ送られる蒸気は、最後に②を通過するから、ここは過熱器の可能性。
燃焼ガスは①、②、③の順に移動して、最後は煙突へ行く。だから、①の部分が最も温度が高いから蒸発管?と推定。
これら3つを総合すると、答えは4だと分かる。
過去の出題問題一覧
・H30年問17(再熱サイクル)
・H27年問18(ボイラー)
・H25年問17(再熱サイクル)
・H22年問16(再熱サイクル)
まとめ
汽力発電システムの出題は 4問/10年。理解しておいて損はない。
汽力発電システムでの最重要ポイントは、給水ポンプ、過熱器と復水器の位置。これを押さえておけば、ほぼ解ける。
問題が複雑なときには、どこに水が流れ、どこに蒸気が流れているかを書き込む。
最後、再熱サイクルでは再熱器があることを覚えておく。
過去の出題問題一覧
・H30年問17(再熱サイクル)
・H27年問18(ボイラー)
・H25年問17(再熱サイクル)
・H22年問16(再熱サイクル)