【電気工事士1種 過去問】高圧ケーブルの電力損失(2019年度問18)

<問題 2019年問18>
高圧ケーブルの電力損失として、該当しないものは。

<解答の選択肢>

  1. 抵抗損
  2. 誘電損
  3. シース損
  4. 鉄損

— 答え —
高圧ケーブルの電力損失として、抵抗損、誘電損、シース損はある。該当しないのは鉄損。

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解法と解説

方針

高圧ケーブルの電力損失の問題は、電験の電力科目で出題されるが、電工1試験では極めて珍しい問題。合格レベルに達してから学習で充分。

ふくラボ流攻略法

この問題を解くには、変圧器(トランス)の電力損失を思い出すと良い。

変圧器の電力損失を図(?)で示すと

ケーブルに電流を流したときの損失は、大きく3つ

  • 抵抗損
  • 誘電体損
  • シース損

抵抗損
名前の通り、ケーブルの中の電線の抵抗による損失。

電線の抵抗は小さいとはいえ、0ではない。このため、電線に電流が流れると、Q = I 2 R のジュール熱が発生し、これが損失となる。 いわゆるジュール損

というわけで、ケーブルの抵抗損は、変圧器における銅損(ジュール損)に似たやつ。

誘電損
“誘電”という言葉は、電工1では電子レンジの加熱方式で出てくる言葉。

誘電体=絶縁体。

絶縁体に交流電圧をかけると、絶縁体自身には電流は流れないが、絶縁体の中にある原子、分子は、”電気的”に回転することができる。

で、交流の周波数が低ければ、原子・分子は交流の+/-の変化に合わせて回転できるが、周波数が高くなっていくと、いつかは回転が追い付かなくなる。

この回転が追い付かない状態になると、熱が発生する。これが誘電体損。

高圧ケーブル、特に高圧 CV の断面をみてみると、中心から

・導体
・内部半導電層
架橋ポリエチレン
・外部半導電層
・銅シールド
・ビニルシース

という構造である。

導体と銅シールドの間に架橋ポリエチレンという名の絶縁層がある。

銅シールドは接地され、導体に交流電流が流れるから、この架橋ポリエチレン層に交流電圧が印加される。

ここで誘電損失が発生する。

シース損
シース損は、ケーブルの金属シースに誘導される電流により発生する損失。

シースは英単語では sheath。もともとは”刀の鞘”、(道具の)覆い という意味。

電気工事の世界では、シースはケーブル外側の被覆のことで、絶縁体の損傷を防ぐ。あなたのよくご存じ VVF は、Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-type cable の略。

シースとして使用される材質はケーブルの用途に合わせられる。

電工1試験では主にポリ塩化ビニル(VVFケーブル)、架橋ポリエチレン (CVケーブル) がよく出るが、鉛(OFケーブル)、アルミニウム(超高圧用CVケーブル)などの金属が使われることも。

ケーブルに電流が流れると、右ねじの法則にしたがって導体の周りに磁界が発生するが、シースが金属の場合、この磁界によってシースに電磁誘導が起こり、起電力が生まれる。

起電力が生じたということは、金属シースには電流が流れる。この電流のうち、シースの縦方向(長手方向)に発しする電流を回路電流、シースの横方向(円周方向)に流れる電流を渦電流と呼ぶ。

で、金属シースも抵抗があるから、電流が流れれば熱が発生する。これがシース損の正体。

このシース損は、ちょうど変圧器における鉄損のうちのうず電流損に相当する。

鉄損
変圧器の損失の一つ。

まとめ

高圧ケーブルの電力損失の問題は、電工1試験では極めて珍しい問題。合格レベルに達してから学習で充分。

ケーブルに電流を流したときの損失は、大きく3つ

  • 抵抗損
  • 誘電体損
  • シース損

変圧器の損失と比較すると、理解しやすい。

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