電動機の起動・停止になくてはならないシーケンス回路。数あるシーケンス回路のうち、電工1でトレーニングが必要なのが
- 自己保持回路
- インターロック回路
- 起動・停止回路
- スター・デルタ回路
- 正転・逆転回路
この記事では自己保持回路の原理について説明する。この原理は制御回路の基本中の基本、この回路の原理が理解できれば、その他の回路は容易に理解できる。なので、覚えるだけでなく、充分納得して欲しい。
あと筆記試験には直接関係ないが、あなたが電気工事士としてだけでなく、電気・電子回路の設計者も視野に入れているのであれば、「なぜ」についても理解しておくと非常に役立つ。この「なぜ」について、別記事(作成中)で詳しく解説する。「なぜ」についてもぜひ納得して欲しい。
自己保持回路の原理
基本構成
下図に自己保持回路の基本構成を示す。
必須部品は
- モーメンタリ型(自動復帰型)のスイッチ SW
- 電磁リレー MC
の2つ。
この回路を言葉で説明すると、
- SWに直列に MC のコイルが接続
- SWと MCのスイッチ部が並列接続。この SWと MCのスイッチとは OR回路を形成
これが基本回路。
次に、自己保持回路の動作について説明しよう。
1.SWを操作
まず最初の操作は、SWをONすること。
2.MCのコイルが起動
すると、MCのコイルの両端に電圧がかかるから、MCのコイルが起動する。
3.MCのスイッチ部(コンタクト部)がON
すると、MCのスイッチ部分は a接点なので、スイッチ ON する。
4.SWを離しても
この状態から、SWを離すと自動復帰して SWは切れる(OFFになる)。しかし、SWとOR回路を形成しているMCのスイッチは ON状態なので、MCのコイル両端には電圧がかかったまま保持される。
つまり、SW を OFF しても、回路の ON 状態は維持される。これが自己保持回路の動作原理である。
納得できただろうか?
自己保持回路をOFFするには
自己保持回路の基本構成は上の図で示した回路なのだが、困った(?)ことに、この回路だと、一度 ON するとずっと ON しっぱなし。電源そのものを落とさない限りOFFできない。これでは不便だ。
というわけで、実際の回路では、OFFする機能を付けている。それが
b接点(ブレーク接点)
いわゆる、操作したら(動作したら)「切れる」スイッチ。具体的には、こんな感じで b接点SW (b-SW) が回路に組み込まれている。
b接点スイッチを操作すると
今は保持回路は ON 状態。そこから b-SW を操作(押す)と
MCコイルが停止
b-SWが切れるので、上部電源ラインからの電圧が MC のコイルに供給されなくなり、コイル停止。
MCのスイッチ OFF
MC のスイッチ部も切れる。
自己保持回路が OFF状態
そうすると、b-SW の操作を止める(手を離し)ても、OR回路の SW も MCのスイッチ部の両方が OFF なので、MC のコイルには電圧はかからず、自己保持回路は OFF状態を維持する。
実際の回路では
さて、自己保持回路の基本構成で動作を説明したので、「動作の理屈は分かったけど、この回路、何の役に立つの?」と思ったかもしれない。これは当然であり、この基本回路だけでは何の役にも立たない。
実際には、MCのスイッチ部を自己保持に使うだけでなく、電動機を ON/OFF することができる。
まとめ
自己保持回路の原理は制御回路の基本中の基本。この回路の原理が理解できれば、その他の回路は容易に理解できる。なので、覚えるだけでなく、充分納得して欲しい。
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