三相かご形誘導電動機は合格のために必ずマスターする項目。
その中で電動機の始動方法は頻出。合格のために、まず2方法を習得すべし!
- 全電圧始動法(じか入れ始動)
- スターデルタ(Y-Δ)始動法
2つの始動方法それぞれの特徴と、回路図で正しい接続(結線図)を選ぶことができるようになれば、合格にぐっと近づく!
誘導電動機の始動方法
三相かご形誘導電動機の始動方法には、次のような方法がある。
- 全電圧始動法(直入れ始動)
- スターデルタ(Y-Δ)始動法
- リアクトル始動法
- 始動補償器法
- インバータ制御法
このうち、電工1で重要なのは全電圧始動法(直入れ始動)とスターデルタ始動。
全電圧始動法(直入れ法)
全電圧始動法(直入れ法)は、「直入れ」から類推できるように、三相の電源ライン3本をなーんにも工夫せずに電動機に接続し、電源電圧をそのままかけて始動する方法。
3本の電源ラインR, S, Tが真っ直ぐ電動機に接続されている。これが直入れ始動法の結線。
定格電流と始動電流
結線は工夫いらずで分かりやすいのだが、問題点がひとつある。それは始動電流がでかい。
次の図をみてもらおう。この図、過去問で何度も出題されている重要図だが、電動機の滑りと電流/トルクが示してある。
注目してもらいたいのは、始動時はすべり100%(最も左)で示される始動電流が流れる。これに対し定格状態(通常運転時。すべりは5%前後)での定格電流は始動電流に比べてずいぶんと小さい。
反対の言い方をすれば、始動時には電動機の定格電流の数倍流れる。
なので、電源ライン、ブレーカーを注意深く選定しないと、モーターを動かす度に電線が熱くなり過ぎたり、遮断機が落ちてしまったりする。
こんなこともあり、この全電圧始動法(直入れ始動)は、定格出力が3.7kW以下のかご形誘導電動機に限って使うことができる。
スターデルタ(Y-Δ)法
全電圧始動はとにかく始動電流が大きいのがネック。
そこで考え出されたのがスターデルタ始動。
始動電流を小さくするため、電動機が停止した状態から始動するときには電動機の固定子巻線をスター結線(Y結線)にする。
そうすることで始動電流を、全電圧始動したときの 1/3に抑える。
そして、電動機の回転速度が定格速度に近づいたら、巻線をデルタ結線(Δ結線)にする。
このように、結線をスター→デルタへとつなぎ変えて始動する方法がスターデルタ始動法。
定格出力が3.7kWを超えるかご形誘導モーターに使われる。
過去問
・H24年問34の選択肢二
結線を切り替える方法
固定子巻線の接続をスター→デルタへと結線を切替える方法が、
- MC(電磁接触器) 2個で切替
- スターデルタ始動器
- 3極双投スイッチ
このうち、MCとスターデルタ始動器は頻出なので、個別に解説する。
結線図
Y結線、Δ結線を上の図のように書いてくれれば非常に分かりやすいのだが、筆記試験ではムチャクチャ分かりにくく出題される。
それがこちら。
MC-1を介して接続されている部分がスター結線。
MC-2のほうがデルタ結線。
Y結線(は分かりやすい)
Y結線の特徴は、3つの固定子巻線が一点で接続されていること。
これを試験問題に合わせた回路図で描くと、X、Y、Zの 3線が赤線で示した部分でつながっている。これが Y結線。
難関なデルタ結線(Δ結線)
デルタ結線(Δ結線)の特徴は、3つの固定子巻線が三角形に接続されていること。
この形を別の言葉で表現すると巻線と電線で一周できる。つまり、上の図で左下のU線(点)を出発点にして反時計回りに一周すると、
- Uから U-X間コイルを通って、Wに到達
- Wから W-Z間コイルを通って、Vに到達
- Vから V-Y間コイルを通って、Uに戻る
この「くるっと一周」を回路図で実現できれば良い。それがこちら。
もし「くるっと一周」がピンとこなければ、「3つの巻線を一筆書きの要領で結ぶ」こと。
- Uから U-X間コイルを通って、Wに到達
- Wから W-Z間コイルを通って、Vに到達
- Vから V-Y間コイルを通って、Uに戻る
あなたも一度、自分でつながりを指でなぞってみて欲しい。
実際の出題問題
Y-Δ結線について過去に出題された問題(・H21年問45)がこちら。Δ結線になる回路図を選ばせる問題。
3つのコイルが一筆書きでつながる結線が正解。
イとロは U線から U-X間コイルを通って U線に戻るから間違い。
ハは、V線から V-Y線コイルと通って、V線に戻るから間違い。
残った二の回路図を追いかけてもらうと、3つのコイルがぐるっとつながっている。
というわけで、正解は「ニ」。あなたは正しく答えられた?
過去問
・2019年問44(電動機始動のデルタ結線)
・H21年度問45(電動機始動のデルタ結線)
始動器
スターデルタ始動器は回路図記号と配線数が出題される。
MCで切替するときの結線図からも分かるように、電動機への配線は、U, V, W端子へ3本と、X, Y, Z端子への3本、合計6本の配線がある。
過去問
・H30年問50(スターデルタ始動器)
・H27年問50(スターデルタ始動器)
・H24年問34の選択肢ハ
(おまけ)実物のモータへの接続
この節は、筆記試験とは直接関係ないが、あなたが電気工事士の資格に合格し、実際に三相モータに電源をつなげるときに非常に役立つコツである。
それは、取説(カタログ)を見る。これ、大本気。
他のブログなどを見てると、端子台箱の模式図を書いて「〇〇〇〇のように接続すれば良い」と書いてある。
しかし、これをそのまま信じては危険である。
というのも、電機メーカーによって、端子台のラベルの付け方とかが異なっている場合があるから。だから、モータに電線を接続するときには、必ず取説(カタログ)を入手すること。
ちなみに、三菱モータのカタログには次のような図が掲載されている。
出力 3.7kWまでのモータ
3.7kW以上のモータ
筆記試験の問題文では、U-X, V-Y, W-Z のアルファベットが用いられているが、三菱のカタログでは U1-U2, V1-V2, W1-W2 が用いられている。
直入れ結線、Y-Δ結線それぞれ、これら取説の図を見ながら電線を接続すれば良い。
まとめ
スターデルタ結線(Y-Δ結線)の正しい回路図を選べるようにトレーニングすべし。
- 全電圧始動法(じか入れ始動)
- スターデルタ(Y-Δ)始動法
関連問題
・R3年午後-問10(電動機の始動方法)
・H30年問50(スターデルタ始動器)
・H27年問50(スターデルタ始動器)
・H24年問34
・H21年問45(スターデルタ結線)