進相コンデンサと直列リアクトルは、高圧受電設備の主要構成装置の一つである。このため、過去13年間では 16回以上出題されている(接地工事を含む)。
進相コンデンサと直列リアクトルは別物だが、お隣同士に配置されるのと、設置目的・機能が互いに関連しあっているため、この記事では一緒に解説する。
進相コンデンサについて押さえるポイントは以下の通り。
- 回路図記号と単線結線図
- 外観と端子数
- 役割は力率改善
- 自動力率調整装置
- 放電用抵抗(コイル)は相間に接続
直列リアクトルのポイントは
- 回路記号と外観
- 進相コンデンサに流れる突入電流の抑制
- 高調波の発生を抑制
- 容量は進相コンデンサの6%が標準
この記事では、過去に出題された問題へのリンクと、解答するのに必要な知識をほぼ網羅している。
あなたにとっていただき問題になるまで「解説を読む←→問題を解く」を繰り返して、確実に点数をゲットできるようにしてもらいたい。
なお、この記事を動画にもしているので、動画のほうが分かりやすい人は動画解説で合格を目指してください。
進相コンデンサ
押さえる5つのポイントについて、順にお伝えする。
- 回路図記号と単線結線図
- 外観と端子数
- 役割は力率改善
- 自動力率調整装置
- 放電用抵抗(コイル)は相間に接続
回路図記号と単線結線図
進相コンデンサ(と直列リアクトル)部分の単線結線図を示す。
電子回路ではお馴染みのコンデンサの記号を□で囲ったものが、高圧進相コンデンサの図記号。
その直上流にある円形の変な形の記号が直列リアクトル。進相コンデンサに突入電流が流れ込まないようにしている。
受電設備の回路図でたまにコンデンサ容量 [kvar] が記載されていることがある。記載があるときは要注意。
外観と端子数
筆記試験では外観写真がよく出題される。進相コンデンサを見極める方法は、装置上部にある端子が3つ。
受電設備単線図を見ると、進相コンデンサは回路の終端に接続される。このため、端子は三相分の入力が必要なので、端子は3つだけ。
これに対し、試験問題でよくひっかけに出てくるのが、端子数が6の直列リアクトル。次がH25年に出題された、進相コンデンサと直列リアクトルの引っ掛け問題。
端子数が3のロが進相コンデンサ。端子数6の二が直列リアクトル。残るイとハは変圧器。
関連問題
・H25年問49(進相コンデンサと直列リアクトルの外観)
力率改善
進相コンデンサを受電設備に設置する目的は力率改善。
力率についての詳しい説明は別記事(作成中)でお話しするとして、一言で言うと電力をどれだけ有効に使用しているかの目安。
設備内にモータがたくさんあればあるほど電力の使用効率は悪くなる=力率が低くなる。
この低い力率を改善するのにコンデンサを設置する。
関連問題
・R3年午後-問23(SC外観と用途)
・H24年問23(進相コンデンサ)
・H23年問22(直列リアクトル)
自動力率調整装置
上記の単線結線図を見てもらうと分かるように、直列リアクトル+進相コンデンサの電路を入り切りする開閉器は負荷開閉器LBS か、小容量のときには高圧カットアウト PC。
しかし、筆記試験で自動力率調整装置という単語が現れたときは電磁接触器を選ぶ。
工場などでは、ラインが稼働しているとき・稼働していないときではモータに流れる電流が大きく変化し、それによって力率も大きく変わる。このようなときには、工場内設備の力率を検出して、自動で電路に進相コンデンサを接続・回路から切り離す、自動力率調整装置を設置することがある。
この自動力率調整装置を設ける場合、コンデンサに通じる電路を頻繁に開閉するため、負荷開閉器や遮断機ではなく電磁接触器が用いられる。
この問題は文章問題として出題され、出題確率は意外に高い。要注意を。
関連問題
・R2年問20(高頻度開閉)
・H29年問34(自動力率調整装置)
・H26年問21(高頻度開閉)
・H26年問33(総合問題)
・H24年問33(自動力率調整装置)
放電用抵抗(コイル)は相間に接続
コンデンサに溜まった電荷を放電するための回路についてときどき出題されている。
正しい回路は抵抗を相間に接続。
早く放電したいときにはコイルを接続するが、このときも相間に接続。
でだ、あなたをひっかける誤まり問題では
1.直列に接続
2.直列リアクトルの用途として放電
という言葉・記述がされている。引っかからないように。
関連問題
・H30年問48(リアクトルの用途・機能)
・H27年問47(リアクトルの用途・機能)
直流リアクトル
直列リアクトルのポイントは
- 回路図記号と外観
- 進相コンデンサに流れる突入電流の抑制
- 高調波の発生を抑制
- 容量は進相コンデンサの6%が標準
回路図記号と外観
進相コンデンサ SC のところでも少し触れたが、試験では進相コンデンサと同様に、外観写真がよく出題される。
外観で進相コンデンサと大きく異なるのは、装置上部にある端子数。
直列リアクトルは回路の途中に接続される(下流に進相コンデンサ)ため、端子は入力3、出力3の合計6端子ある点。
関連問題
・2019年問22(SRの外観と用途)
・H28年問23(SRの外観と用途)
・H25年問49(SC と SR の外観)
・H23年問22(SR の外観と役割)
進相コンデンサに流れる突入電流の抑制
あなたは、スマホの充電器とかの電気機器をコンセントに差し込んだ瞬間に、一瞬ぱちっと火花が出るのを見たことはあるだろう。
あの火花は一瞬大電流が流れることによって発生しているが、その大電流が流れる原因の一つがコンデンサの存在。空のコンデンサめがけて突入電流が流れ込む。
この突入電流、実は高圧受電設備でも開閉器を閉じて進相コンデンサを高圧電路に接続する瞬間に、開閉器を通って進相コンデンサに流れ込む。この突入電流は、コンデンサや受電設備にはあまりよろしくない。
そこで、突入電流を減らすために、開閉器と進相コンデンサの間に直列リアクトルを挿入する。
これが直流リアクトルを受電設備に設置する目的の一つ。
関連問題
・R3年午前-問50(SRの用途)
・H30年問48(SRの用途)
・H27年問47(リアクトルの用途・機能)
・H24年問23(進相コンデンサ)
高調波の発生を抑制
電力線に高調波が流れると、電圧波形が歪んで機器・装置に悪影響がでたり、騒音が発生したりする。このため高調波を減らすことが必要。
この高調波を低減することが直列リアクトルを接続する目的の一つ。
コイル L とコンデンサ C で LCフィルタ回路を構成し、周波数の高いノイズ(高調波)を抑制する。
関連問題
・R3年午前-問50(SRの用途)
・2019年問22(SRの外観と用途)
・H28年問23(SRの外観と用途)
・H27年問47(リアクトルの用途・機能)
・H23年問22(外観と役割)
高調波の発生源
高調波の抑制とともに、試験問題に出題されるのが高調波の発生源(例:H30年問21)。
発生源となる機器はスイッチング動作や放電を機器。代表的なものが、半導体スイッチを利用した
・整流装置
・インバータ
・UPS(無停電電源装置)
また、アーク放電を起こすアーク炉などである。
関連問題
・H30年問21(高調波の原因)
・H22年問20(高調波の原因)
容量は進相コンデンサの6%が標準(高得点狙い)
直列リアクトル SR の容量を問う問題の出題頻度は13年で4回で、合格の分かれ道項目。
リアクトルの容量は、コンデンサ容量の6%が標準。8%、13%のものもあるが試験で出題されるのは 6%。
単線結線図の進相コンデンサに容量 [kvar] が記載されているときは、
・リアクトルの容量
・開閉器の種類
を解答させる問題が出題される。
リアクトル容量はコンデンサ容量の 6% と記憶
関連問題
・R3年午後-問47(SRの容量)
・H23年問49(SRの容量)
・H22年問32(SRの容量)
まとめ
進相コンデンサと直列リアクトルは、10年間で 15問出題されている超頻出問題。
進相コンデンサで押さえるポイント:
- 回路図記号と単線結線図
- 外観と端子数
- 役割は力率改善
- 自動力率調整装置
- 放電用抵抗(コイル)は相間に接続
直列リアクトルのポイント:
- 回路図記号と外観
- 進相コンデンサに流れる突入電流の抑制
- 高調波の発生を抑制
- 容量は進相コンデンサの6%が標準
今回ご紹介したポイントをマスターすることで、あなたが1回で電気工事士1種に合格できるように応援している!