PAS/UGSに関連した問題は、最も出題頻度が高い。名称を答えよというシンプルな問題から総合的な正誤問題まで含めると、毎年2~3問(10年間で30問弱)は出題されている。
したがって、あなたが電工1筆記試験に合格するには、PAS/UGSを必ずマスターするべし。
ポイントは次の7つ。
- 単線図
- 電気事業者と需要家の境界
- 責任分界点と区分開閉器
- LBSと過電流ロック機構
- 地絡電流ともらい事故
- ZCT/ZPD
- GR/DGR
他の装置よりもポイント数が多く、この記事もボリュームたっぷり。
しかし、この記事では受電設備の単線図を丸暗記した以降は全部を関連付けて説明しているので、記事順にマスターしていけば、意外にラクに全部をマスターできる。
確実にものにして、合格へ近づいてほしい。
PAS/UGS
短期間で確実にマスターするために、まず最初に必ず単線図(全体)を暗記すること。
それから、以下の順番でひとつづつ関連付けていくこと。
- 単線図
- 電気事業者と需要家の境界
- 責任分界点と区分開閉器
- LBSと過電流ロック機構
- 地絡電流ともらい事故
- ZCT/ZPD
- GR/DGR
単線図
PAS/UGSは、高圧受電設備の単線図では最も上流の責任境界&地絡保護と囲った部分。
拡大するとこんな感じ。
電気事業者と需要家の境界
下図に、高圧電路(6,600V)から受電設備(屋上キュービクル)に電気を引き込む図を示す。
図中左側の 3Φ 6,600V と記した部分が電気事業者担当。
コンクリート柱に取り付けられた GR付PAS と記した機器の右側が需要家担当。
この電気事業者担当と需要家担当の境界に設置されるのが、PAS もしくは UGS のどちらか。柱の上に設置されるのが PAS、土(?)の上に設置されるのが UGS 。
PAS と UGS の名称はそれぞれ
PAS: Pole Air-break Switch; 柱上用気中開閉器
UGS: Under ground Gas Switch; 地中線用ガス開閉器
写真はPAS。
責任分界点と区分開閉器
責任分界点というくらいなので、事業者側で起こった事故は事業者側で、需要家側で起こった事故は需要家側で責任もって対処してよ、ということ。
そして、需要家側の事故の中でも特に地絡事故が電力系統(事業者側電路)に悪影響を及ばないように、と決められている。
そこで、責任分界点には、
- 区分開閉器として高圧交流負荷開閉器 LBS
- 地絡事故遮断装置(機構)
の設置が必要。
2番目の地絡事故遮断装置(機構)として設置されるのが、
- ZCT / ZPD
- DGR / GR
保護協調(合格安全圏狙い)
責任分界点で責任を分けているとはいえ、事故が起こったときにお互いが知らんぷり、というわけにもいかない。
というわけで、波及事故を防止するため、需要家側の地絡事故装置と電気事業者の地絡事故装置との動作協調(保護継電器の協調動作)をする必要がある。
→ 過去問(総合問題で難問揃い)
・R3年午前-問30(PASの役割・機能)
・R2年問22(PASの外観と役割)
・R2年問46(PASの役割・機能)
・2019年問30(UGS総合問題)
・H30年問30(GR付PAS総合問題)
・H28年問30(UGS総合問題)
・H27年問23(GR付PAS総合問題)
・H26年問46(PASの役割)
・H25年問30(UGS総合問題)
・H24年問30(GR付PAS総合問題)
・H21年問21(GR付PAS総合問題)
・H21年問30(UGS総合問題)
LBSと過電流ロック機構
開閉器は LBS と決められているので、これはそのまま単線図で丸暗記。
LBS と一緒に理解して欲しいのが過電流ロック機構。
回路を遮断する開閉器の双璧が負荷開閉器LBS と遮断器CB。どちらもアーク消弧機能を持っている。ただし、負荷開閉器のほうは定格負荷以上の電流は遮断できない。ここが要注意点。
地絡電流は数A から多くて 50A 程度を想定。これに対し、短絡電流は場合によっては 数kA(キロアンペア)になることも。
この短絡電流が流れている状態で接点を開くと、激しいアークが発生する。 LBS で遮断しようとしたらどえらいことになって(アークを消弧できなくて)、PAS/UGSがぶっ壊れてしまう。
そこでPAS には、地絡電流には反応して、短絡電流などの想定以上の電流が流れたときには、LBSが動作しないように過電流ロック機構がついている。
→ 過去問
・H22年問30(区分開閉器で引掛け問題)
地絡電流ともらい事故
地絡電流は電力線から大地へ流れる電流。この大地へ流れるために、少々厄介事が起こる。それがもらい事故。
受電点(PAS)から構内(受電設備)への引込電線が長いと、隣(近所)で発生した地絡電流の一部が大地を経由して、自分の設備の引込線にも流れてしまうことがある。
この電流を ZCT が検出してしまうと、自分の設備内で地絡が起きた!勘違いし、LBSを遮断してしまう。これがもらい事故。
このもらい事故を防ぐ方法の一つが、地絡電流の向きを知ること。
他で発生した地絡電流の向きは、自分のところで地絡事故が発生したときとは逆向き。このため、電流の向きが分かればもらい事故は防げる。
電流の向きまでも検出するのが、
方向性システム:DGR + ZCT + ZPD
対して、構内の引込線が短くもらい事故の心配をする必要がないときには、電流の向きを知るシステムが不要。この場合は、
無方向性システム:GR + ZCT
<合格安全圏を狙う情報>
引込線長さが長くなると、隣近所の地絡電流が流れることについて。
筆記試験の問1~6周辺の理論問題の範囲になるが、
1.引込線の長さが長くなると
2.引込線と大地で形成される静電コンデンサの断面積 S が大きくなって
3.容量 C が大きくなり
4.交流インピーダンス 1/jωC が小さくなり、電流が流れやすくなる。
合格安全圏を狙うなら、上記の理解を。
ZCT/ZPD
ZCT
ZCTは Zero phase Current Transformer の略称で、日本語名は零相変流器。
働きは、零相電流=地絡電流を検出すること。
外観
形状(外観)は以下の感じ。左側がZCT。なお、右側が筆記試験で引掛けに使われる CT(変流器) の外観。
取り付けと複線図
ZCTを高圧電路に取り付けるときには、電路3本全部をクランプする(通す)
複線図では3本クランプが分かるように、次のような図を書く。
接地線(合格安全圏狙い)
接地工事の話題であるが、屋内の高圧ケーブル遮へい銅テープにはA種接地工事を施す。
ただし、ZCT+地絡継電器で地絡を検出する必要のある引込電線路では、接地点・線の取り回しがまずいと、地絡電流を検出できないことがある。
地絡電流をきちんと検出するためには、次の方法で接地線を接続する必要がある。
- ZCTより負荷側の点を負荷側で接地
- ZCTより電源側の点を接地するときは、ZCTに接地線を通過させ、負荷側で接地
過去問(H29年問32)で接地工事の正誤を説明する。
左側のイとロは、ZCTよりも負荷側の点に接地線をつなげている。このときは上記1のように、そのまま接地すれば良い。しかし、イとロはわざわざ接地線をZCTに通過させている。ここが間違い。
ハは、ZCTよりも電源側点を接地。このときは上記2のように接地線をZCTに通す。ハはこれができていないので間違い。
正解は二であるが、電源側の点つないだ接地線をZCTに通して負荷側で接地している。
→ ZCT過去問
・H30年問20(ZCTと地絡継電器)
・H29年問32(ZCTと接地線)
・H29年問41(ZCTの機能)
・H28年問41(ZCTの結線図)
・H28年問50(ZCTで引掛け問題)
・H26年問34(ZCTと接地線)
・H25年問22(ZCTで引掛け問題)
・H24年問48(ZCTの珍しい問題)
・H21年問46(ZCTの機能)
ZPD
ZPDは Zero phase Potential Device 略で、日本語では零相基準入力装置。
働きは零相電圧を検出する。
ZCTが検出する零相電流と、ZPDが検出する零相電圧の位相から、地絡電流の向きが分かる(向きを判断するのは DGR の役目)。
外観(合格安全圏狙い)
形状(外観)は以下の感じ。左側がコンデンサ形で、右側ががいし形。
(画像はともに OMRONのHP から引用)
→ ZPD過去問
・H30年問41(ZPDと零相電圧)
・H28年問46(ZPDの用途)
・H24年問41(ZPDの用途)
GR/DGR
GR は Ground Relay; 地絡継電器、DGR は Directional Ground Relay; 地絡方向継電器。
どちらも地絡用継電器であるが、違いは地絡電流の向き(方向)が分からない(GR)か、分かるか(DGR)。
GR は ZCT から零相電流(地絡電流)の情報(信号)をもらい、地絡電流が流れたら LBSに知らせる(接点を開く)。
これに対して、DGR は ZCT に加えて ZPD から零相電圧をもらい、2つの位相差から地絡電流の向きを判定し、自分の設備で地絡が発生したときのみ LBSを開く。
回路図記号は以下の通り。左の矢印無しが GR、右の矢印有りが電流の向きが分かる DGR。
過電流継電器 OCR との違いは、GR/DGRは地絡=大地へ逃げる電流検出のため、アース記号が入っている。
→ 過去問
・H30年問20(ZCTと地絡継電器)
・H29年問42(DGRの略号)
・H28年問47(DGRの回路図記号)
・H26年問48(OCRの図記号; GRで引掛け問題)
・H24年問46(OCRの図記号; GRで引掛け問題)
・H23年問41(DGRの略号)
・H22年問41(DGRの名称)
まとめ
PAS/UGSに関連した問題は、最も出題頻度が高い。名称を答えよというシンプルな問題から総合的な正誤問題まで含めると、毎年2~3問(10年間で30問弱)は出題されている。
合格のために必ずマスターすべき項目がこちら。
- 電気事業者と需要家の境界
- 責任分界点と区分開閉器
- LBSと過電流ロック機構
- 地絡電流ともらい事故
- ZCT/ZPD
- GR/DGR
今回ご紹介した順で PAS/UGS をマスターすることで、あなたが1回で電気工事士1種に合格できるように応援している!
関連問題
PAS/UGS
・R3年午後-問41(PASの外観)
・R3年午前-問30(PASの役割・機能)
・R2年問46(PASの役割・機能)
・2019年問30(UGS総合問題)
・H30年問30(GR付PAS総合問題)
・H28年問30(UGS総合問題)
・H27年問23(GR付PAS総合問題)
・H26年問46(PASの役割)
・H25年問30(UGS総合問題)
・H24年問30(GR付PAS総合問題)
・H22年問30(区分開閉器で引掛け問題)
・H21年問21(GR付PAS総合問題)
・H21年問30(UGS総合問題)
ZCTとZPD
・H30年問20(ZCTと地絡継電器)
・H30年問41(ZPDと零相電圧)
・H29年問32(ZCTと接地線)
・H29年問41(ZCTの機能)
・H28年問41(ZCTの結線図)
・H28年問46(ZPDの用途)
・H28年問50(ZCTで引掛け問題)
・H26年問34(ZCTと接地線)
・H25年問22(ZCTで引掛け問題)
・H24年問41(ZPDの用途)
・H24年問48(ZCTで引掛け問題)
・H21年問46(ZCTの機能)
GR/DGR
・H30年問20(ZCTと地絡継電器)
・H29年問42(DGRの略号)
・H28年問47(DGRの回路図記号)
・H26年問48(図記号の引掛け問題)
・H24年問46(GRの図記号で引掛け問題)
・H23年問41(DGRの略号)
・H22年問41(DGRの名称)